増える地方への移住希望者 背景に新型コロナ

2020-09-02

コロナ機に 都市から地方へ

地方移住の受け入れを積極的に進めてきた愛媛県今治市では、5月からオンラインで移住に関する相談を始めました。参加者は1週間で10人を超え、市では大きな可能性を感じているといいます。

今治市 菅良二市長
「職場という意識が変わってきているのではないか。それをわれわれは取り込めないかと考えている。」

今治市のオンライン相談会に参加した、中川慶之さん(28)は、都内のコンサルティング会社に勤めて4年になりますが、満員電車などソーシャルディスタンスのとれない東京の感染リスクの高さに不安を感じ、仕事を辞めて地元愛媛に帰ることを妻と相談し始めています。

中川慶之さん
「コロナがなかったら移住の話もあまりしなかっただろうと思うのですが、今回のことでより妻とも話す時間が増え、将来のビジョンも話すようになりました。」

仕事を辞めずに移住を

さらに、地方への移住は、いまの仕事を辞めなくてもできると考え始めた人もいます。家具や洋服などの展示会のコーディネーターとして装飾などを手がける尼崎有美さん。これまでは仕事を続けるためには東京を離れられないと考えていました。

尼崎有美さん
「対面でないと特に新規のお客様などは打ち合わせも難しいし、東京にいなかったら仕事はできない、と思っていました。」

しかし、新型コロナウイルスの影響で在宅勤務に切り替えたところ、テレビ会議システムなどの活用で、東京にいなくても仕事に支障がないことがわかったのです。

尼崎さんは、5月31日に「オンライン移住フェア」に参加。全国各地から移住者を募る138団体の中から、興味のある場所を選び、担当者に自治体のサポート体制や住環境などについて相談しました。秋ごろの移住を目指し準備を進めていくつもりだといいます。

尼崎有美さん
「地方で気持ちのいい暮らしをしながら、今までやってきた仕事も続けられるのかなと思っています。」

テレワーク環境の整備で移住促進

地方への移住希望者が増えるなか、別の調査では、「地方への移住を検討する上での不安や問題は何か」という問いに対し、もっとも多くあがったのが「テレワーク環境」でした。
こうしたテレワーク環境の整備に先進的に取り組んできたのが北海道北見市です。若い世代の人口流出をなんとか食い止めようと、5年前、従来の企業誘致に加え、テレワーク人材の誘致を進めることにしました。

会社や製造拠点そのものを呼び込むのが従来の企業誘致です。一方、テレワーク人材の誘致は、市が情報通信機能の整った拠点をつくり、そこに企業の従業員や個人事業主などを呼び込もうというものです。

北見市 工業振興課 松本武係長
「いまは会社を変えずに年収も変わらずに住むところを地方に移すことが可能になってきた。そこをしっかりとらえながら施策を進めていきたい。」

北見市がテレワーク拠点として3年前にオープンしたのが「サテライトオフィス北見」です。施設内には、Wi-Fiやテレビ会議室、鍵付きのロッカーやコピー機などを完備。利用料は1人1万円/月と格安です。出張などで利用する人が年々増え、昨年度の利用者はのべ約3,000人にのぼりました。中には、IT企業の従業員や自営業者など、北見市に移住した人も少なくありません。利用者は、「環境が整っていて場所的なハンデは感じない」「オンラインで日本中の企業とやりとりできてやりがいを感じる」などと話していました。
また、移住者の中には、地域に貢献したいという思いの人もいます。漫画家の田川とまたさん。東京の出版社とオンラインでやりとりしながら、創作活動はすべてサテライトオフィス北見で行っています。

いま大手漫画雑誌で連載している作品の舞台は北見市。北見のすばらしさを伝えたいと、街の風景をリアルに描き込みます。漫画に登場した菓子店では、「うちの店が景色の一部で使っていただけてうれしい」(渡辺主人社長)と話し、田川さんも「漫画の力で北見の良さをこれからも伝えていきたい」と話していました。
全国約200の地域のまちづくりに関わってきた、コミュニティデザイナーの山崎亮さんは、今後、自分にとって過密でも過疎でもない場所を選び取る時代が来るのではないかと言います。

コミュニティデザイナー 山崎亮さん
「コロナ以後の社会において自分にとって適切にまばらな度合いというのはどれぐらいなのか。僕はそれを“適疎”と呼んでいますが、適疎な場所とはどこなのか。自分にとって適疎だと思える場所を探し求めて移動し始めるということが起きるのではないか。あらためてその人たちを迎え入れて新しいタイプの地域をつくっていこうというきっかけになればと思っています。」

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