ビジョナリーな人たち 山口由紀子 有限会社山口屋   ぼけ取締役

2013-01-31

後援:観光庁
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悲壮感を感じさせない地域活性

キッチン会議で明るく乗り切る過疎問題

山口由紀子

昭和17年、徳島県池田町生まれ。20歳で山口家に 嫁ぎ、昭和44年、有限会社 大歩危マーケットの開業 と共に取締役に就任。大歩危駅の無料休憩所『ほっ と案内所』の管理をボランティアで引き受けている。

JR四国土讃線、大歩危駅前で忙しく動きまわる山口由紀子さん。

『歩危マート』の看板娘に就任して5 0年という〝ぼけ取締役〞である。 特大の名刺に「ザ・地場産」とある通り、 地元で採れた食材や郷土が育んできた加工食品が並んでいる。 ただ地元のものだからというだけでなく、その経営理念には、 地域活性化という一本の筋が通っている。

そしてこの店に集まる人は、 〝肩書きなんて関係ない〞地域と世界の人たちなのだ。

店舗面積1 6坪の極狭マート  売り上げの坪単価は日本一

JR四国土讃線大歩危駅は、過疎化が進む 山あいの駅である。乗降客数の平均は1日約 150人。1㎞圏内にある小売店は4軒ほど。 土讃線の全特急が停車する駅としては寂しい 数だ。

そんな大歩危駅の目の前に、太陽のごとき 笑顔の女性がいた。歩危マートの女将、山口 由紀子さんである。

「私は池田の生まれで、二ヶ月に1回くらい、 父がやっていた移動映画館の仕事でここ(大 歩危)に来てたんです。テレビのない頃でね。 学校のPTAが主催となって映画を上映して、 その収益金で修学旅行に行くんです。入場料 は1回、20円とか30円だったかな。それで私 たちに払うお金は、先生が『これしかないん です』とおっしゃることが多くて。そうする とウチの父は『みんな旅行に行きたいんやけ ん、それでええ』と。

結局、移動映画館はつぶれてしまいました けど、ウチの父はここに知り合いが多くてね。 あとの商売がやりやすかったです」

ご主人の山口頼明さんが  「かあちゃんが移動映画館で来たとき、この人しかいないと思ってくっついて歩いて結 婚して、今年で5 0年です。でもそんなに苦労 しなかったな」と言うと、

「いやいや! 子どもができたとき、『こり ゃパンツも買えんで』と言ったんですよ。で も2人とも案外のんきなタイプでね」と、由 紀子さんが笑う。

お二人の結婚は昭和37年、昭和44年に現在 の場所に『大歩危マーケット』が誕生し、駅 前拡張工事のときに店舗敷地の3分の2を提 供したため、名前も3分の1の『歩危マート』 になったそうだ。

店舗の面積は16坪。全日食チェーンに加盟 しているが、全国1800店舗の中で最も小 さな店ではないかと由紀子さんは言う。

「もう什器なんて置いたら、人が通れるよ うなスペースもあまりないんですけど。それ でもおかげさまで毎日200人が来てくれま す。ここらはお茶の産地なので、お茶摘みに 人がやってくるゴールデンウイークあたりは 1日400人。だから言うんです。店舗面積 何百坪っていう大都市の店に、ウチが勝てる ことがあるよと。それは売り上げの坪単価。 きっと日本一でしょうね」

みんなでワイワイやってると いいアイデアが浮かぶんです

『歩危マート』の向かいに「二号店」とい う看板の店がある。

「もともとは『住宅設備機器』という大きな看板があったんですけど、おかあちゃんに 乗っ取られたんです(笑)」と頼明さん。

実はこの店を『歩危マート』の二号店にし ようと提案したのは、プロパンガス事業を営 む頼明さんである。

「主人が言うんです。今はもう、何かを展 示して売っていこうかという時代とは違うと。 だからここを二号店にして、店の前にベンチ を置いて、骨董屋で買ってきた茶臼も置いて、 近所の人とか観光の人なんかが座ってお茶を 飲めるようにしました」

海外からの観光客も数多く訪れるため、5 ヶ国語に対応できる会話帳も準備してある。 とにかくニーズに応えたい、人を楽しませ たいと、店のあらゆるところに多彩な工夫が こらされている。

そこで品ぞろえのポリシーを聞いてみた。

「徳島県の観光協会の理事長が、ウチに来て『汽 車降りたら、なんちゃおもしろいもんがない』 と言うんですよ。それじゃあ美味しいものや 珍しいものを揃えようと思ったワケです。

でもとんでもなく珍しいものじゃしょうが ない。揚げとかこんにゃくとか豆腐とか、こ のあたりにあるものの中から何か作ろうと思 ってね。

 人間って不思議なもので、食べるものが10 個あったとしたら、その中で入れ替わるのは 1つか2つなんです。つまり特別に変わった ものが欲しいなと思うのは1つか2つくらい しかないってこと。7〜8割は毎日、同じも のを食べているし、欲しいのは同じものなんです。だから昔から食べ染めたものを大事に したいんですよ」

アイデアが生まれるのは人との会話の中か らだという。その中枢となるのが、二号店の奥、 山口家のキッチンなのだ。

「キッチン会議って呼んでるんですけどね。 ここには駅の人も警察の人も、地域の人はみ んな来る。たくさんの人が寄り集まって、ワ イワイ言ってると、いい話が出るんです」

その結果が『大歩危駅前1日1ケごみひろ おう会』や『大歩危駅活性化協議会』の発足 であり、駅の案内所を改装してLAN設備を 開設することであり、徳島県内のJR全74駅 に嵯峨御流で花を活けることだったのだ。

「ゴミ拾いっていうのもね、この会に登録 したら、東京でも大阪でも自分の家に帰った ら、自分のウチ以外のところで1つ拾ってく ださいということなんです。そうやっていく と、ゴミ拾い運動が全国に広まるでしょう? それが大事なんですよ」

キッチン会議で「それおもしろいな、やる わ」となったら即刻、取り組みが始まる。関 わる人、すべてが楽しんでいる様子には、「過 疎の限界集落」という厳しい言葉の響きは似 合わない。

「これからやりたいこと? それは今まで どうりやな。ニコニコ笑って生活すること。 自分たちが楽しかったら、みんなも楽しいだ ろうと勝手に思う。そしたら若い人も、将来 同じようにしてくれるだろうと思うんですよ」

由紀子さんが地場産のものに こだわり、

地元の人に作って もらった大判の

「ぼけあげ」。

菜っ葉汁に入れると旨い。

完成まで構想1年半、ここ7年 ほどのヒット商品である。

◎木村の視点

歩くのが危ないというと ころから名付けられたとい う歩危の地名。四国山脈を 越えるとき、必ず通らなけ ればならない場所で、吉野 川の激流と急峻な崖が切り 立つ難所として古くから知 られている。そんな過疎の 町にとびきり元気な女性が いる。山口由紀子さん。い ただいた名刺のサイズは通常の名刺5枚分はあろうかとい うB6判。

裏には地元産の商 品名がずらり。まさに口八丁 手八丁とはこの人の為にある のかと思うくらい。達者なプ レゼンテーションを受けて、 たじろぐ私たちにタイミング 良くお茶を注ぐご主人。まる で手練れの夫婦漫才を見てい るようだった。「暗いと不平 を言うよりも、進んで灯りを点けましょう!」、どこかの 標語にあるこの言葉を、ま さに実践している肝っ玉か あさんである。山口さんお 奨めの「ぼけあげ」、本当に 美味しかったです。

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